2012年08月06日

『信濃の国』と平林堂書店

我が長野県の郷土の歌『信濃の国』
その誕生から現在に至るまでには、その時代時代の社会情勢を背景にさまざまなドラマがありました。

信州教育とまで言われる我が県独自の教育理念のもと、この『信濃の国』は全県にくまなく浸透していったわけですが、県民の歴史・教育、民衆運動などの書籍に力を入れてきた当店も、創業当初から『信濃の国』についての数多くの書籍および関連商品を扱ってまいりました。

特に、信濃の国誕生の父と言われ、信濃教育会会長でもあった正木直太郎氏が上田出身であったことも、当店と『信濃の国』をより深く結びつけています。


それでは、以下に『信濃の国』の生い立ちと現在に至る歴史をご案内しましょう。





信州に生まれ信州で育った人々にとって、幼いころから耳にし、歌いなじんできた懐かしいふるさとの歌・・・それが『信濃の国』です。この歌は今から百年以上前の1899年(明治32年)に発表され、翌年1900年に作曲されました。

作詞・作曲ともに長野師範学校の教師でしたので、同校の行事の折々に歌われ、特に全校運動会では遊戯もとりいれられてハイライトを飾りました。この師範学校で学び巣立った新しい教師たちによって、全県にくまなく浸透して、世紀を超えて歌い継がれてきたという歴史があります。

この歌の作られた時代のわが国では、国家主義体制を強力に推進する教育がすすめられていました。しかし当時の信濃教育会は、戦争(日清戦争)が終わってからもまだ軍歌ばかりを歌わせることはよくないと、独自の歌を作ることを決め、広く県下教育者の意見を参考にして7つの歌曲を作り、学年別に割り付け、この歌を優先的に教えるようにしました。

一方、幕藩体制から明治となった新政府は行政指針が定まらず、現在の長野県が誕生したのは明治9年からのことです。戦前から歴史的、地理的等の要因により分県運動や移庁運動が繰り返され、その都度融和統合の役割を果たしてきたのでした。

戦時中は、国の方針で満州に「信濃の村建設」のために、と一家を挙げて移民した皆さんもこの歌で故郷をなつかしみ、松本五十連隊の兵士たちや、満蒙開拓青少年義勇兵たちも夜空を眺めながら、この歌を口ずさんで故郷を偲んだと伝えられています。

戦後になってからも『信濃の国』は、県民団結の歌として活躍し続けます。

1948年(昭和23年)県庁舎焼失の際にも、県会本会議場が、南北信の分県論の雰囲気につつまれたとき、傍聴席から突然『信濃の国』の合唱が起こり、分県問題は白紙に戻ったと県政史は伝えています。

更に1953年(昭和28年)に浅間山麓に米軍による演習地を建設の計画が出された時、県議会をはじめ県下すべての市町村議会、政党、自治会等、県下17団体の組織で「浅間山演習地化反対期成同盟会」会長(小山邦太郎氏)を結成、6月8日軽井沢町で県民大集会に雨をついて集まった4000人の『信濃の国』の大合唱の中で絶対反対のアピールを発表。わが国唯一と言われる闘争の勝利の歴史をつくりました。

60年安保(昭和35年)でも長野県の参加者は、この歌の歌われている処が集合場所だったと言われています。

1968年(昭和43年)白馬村で第23回冬の国体が開かれた折、各県旗の掲揚の際、地元中学校の生徒がブラスバンドの演奏で『信濃の国』を歌ったところ、期せずして5000人の大合唱となり、全国から参集した観衆は驚き、翌日の全国紙にも大きく取り扱われました。

このような事からこの年の5月20日に正式に県歌制定が公示されたのです。

そして1998年(平成10年)の第18回冬季長野オリンピックの開会式の入場行進にもこの『信濃の国』が演奏され、世界の人々にもこのメロディが届けられたという県民にとって喜びでもあり誇りでもありました。

立県百年の記念事業の一つとしての県歌制定とされましたが、その後、これを記念して二つの碑も建てられました。
現県庁敷地東入口と松本市の県営運動場入口で、過去の南北信の対立の歴史に終止符を打てたらという願いも込めてのものでした。
当時の信濃教育会の太田美明氏は特志者の寄附も辞退して、どこからも補助、助成をもらわず、県民みんなの歌だから、みんなで建てようと、児童生徒は一人1円、県民は一戸に10円の寄附をお願いし、県下全家庭54万戸に趣意書を配布した結果、全予算600万円は計画通り県民の拠金によって充足できました。
尚建立時のいきさつについては、「碑の裏面に刻んであるので…。」と言って、更に今後は「学校でも公民館や役所や職場でも家庭でもみんなで歌いつづけてほしい」と言っています。

今、国の内外にある多くの長野県人会では、最後に必ず『信濃の国』を合唱して散会するという慣わしが、続けられているとのことです。


平林堂書店 公式サイト
信濃の国(http://heirindo.com/shinanonokuni/shinanonokuni.html)コーナーより

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Posted by 上田平林堂書店 at 23:12│Comments(0)信濃の国
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